第一部

【I-011】詰所への潜入

通信室から戻ったヴィクトールは、先程到着したばかりの、この仮の拠点と定めた建物の内部を改めて隅々まで見渡した。 試作段階の画像投影装置……これが大王の言っていた最先端の機械だろうか。その他にも、電気仕掛けの拷問道具のようなものが雑多に置かれ...
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【I-010】不穏な海の街

翌日の朝早く、白亜の船体を持つ飛翔船は、再び内海を越えるべく西の空へと舞い上がっていた。国でゆっくりと時を過ごしていては、期日に間に合わなくなってしまう。自らが定めた計画とはいえ、あまりにも余裕のない計画だと、ヴィクトールは溜め息をこぼした...
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【I-009】帰還

今が真夏である事を感じさせないほど心地良い風が、城の中にまで吹き込んでいる。ここに暮らす華やかな人々の心にも、ひとときの安らぎをもたらしていた。 一年を通して穏やかな気候に恵まれたこの美しい草原に城を建てたのは、今から三百年前に世界にその名...
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【I-008】嵐の後

炎の嵐が去った城内は、かつての優雅な飾り付けの面影もない様相ではあったが、あの阿鼻叫喚の状況から一転して、驚くほど静かになっていた。 後を任された新首長ラミーは、彼と共にこの地に留まるよう命じられた一部の配下たちに何やら指示を出すと、城の奥...
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【I-007】紅蓮の皇帝

巨人の亡骸の後ろに、ひとりの青年が立っていた。 その右手には宝石がちりばめられた、彼自身の背丈ほどもあろうかという長大な剣が握られ、巨人の血でべっとりと濡れている。 ……だが、そんな光景はもはや些細なことに過ぎなかった。 人々の視線は、青年...
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【I-006】変貌した城内

シーマはひとり、殺伐とし始めた城内を突き進んでいた。権力を落としかけた老人を脅していても無意味だと感じた彼は、その世話を帝国軍に任せ、マリプレーシュ城へ直接の手がかりを探しに来ていた。 歴史の浅いこの国では前例のない規模の混乱である。帝国軍...
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【I-005】定刻来たる

店内の客たちは、血の気を失ったかのように顔を青くし、またある者は半信半疑の様子で、慌てふためきながら一斉に散っていった。店主までもが店を放り出して裏の自宅へ退避したが……エマとリュックの姉弟は衝撃のあまり、その場から動けなくなるほどの衝撃を...
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【I-004】神器の伝説

『……という訳であるから、この度は通信という最新技術を披露する絶好の機会に、その方、グランフェルテを使ってやったのだ。今日ばかりは遠慮せず大いに喜ぶが良いぞ』 ロドルフ・マクシミリアン・エクラヴワ五世大王。実力で覇権を握った初代大王マクシム...
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【I-003】少女と剣士

彼女は、迷っていた。 つい先日、十七歳の誕生日を迎えたばかりのエマは、化粧室の鏡の前で立ち尽くしていた。小袋から取り出した櫛で、肩まで届く淡い金茶色の髪を丁寧にとかしながら、ふと眉を寄せて小首を傾げる。彼女の顔は世間一般で言う“美人”という...
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【I-002】運命の子

森の中にひっそりと建てられた小さな家。それは「小屋」という言葉がふさわしいほど質素なものだった。 それまでイザベルが住んでいた城と比べれば、比較にならないほど狭い。下僕扱いされていたとはいえ、かつては絹のドレスを身に纏い、静かな室内で豊かな...