第一部 【I-007】紅蓮の皇帝 巨人の亡骸の後ろに、ひとりの青年が立っていた。 その右手には宝石がちりばめられた、彼自身の背丈ほどもあろうかという長大な剣が握られ、巨人の血でべっとりと濡れている。 ……だが、そんな光景はもはや些細なことに過ぎなかった。 人々の視線は... 2024.04.21 第一部I-02 混沌の幕開け編
第一部 【I-006】変貌した城内 シーマはひとり、殺伐とし始めた城内を突き進んでいた。権力を落としかけた老人を脅していても無意味だと感じた彼は、その世話を帝国軍に任せ、マリプレーシュ城へ直接の手がかりを探しに来ていた。 歴史の浅いこの国では前例のない規模の混乱である。帝国... 2024.04.24 第一部I-02 混沌の幕開け編
第一部 【I-005】定刻来たる 店内の客たちは、血の気を失ったかのように顔を青くし、またある者は半信半疑の様子で、慌てふためきながら一斉に散っていった。店主までもが店を放り出して裏の自宅へ退避したが……エマとリュックの姉弟は衝撃のあまり、その場から動けなくなるほどの衝撃を... 2024.04.16 第一部I-02 混沌の幕開け編
第一部 【I-004】神器の伝説 『……という訳であるから、この度は通信という最新技術を披露する絶好の機会に、その方、グランフェルテを使ってやったのだ。今日ばかりは遠慮せず大いに喜ぶが良いぞ』 ロドルフ・マクシミリアン・エクラヴワ五世大王。実力で覇権を握った初代大王マクシ... 2024.04.15 第一部I-02 混沌の幕開け編
第一部 【I-003】少女と剣士 彼女は、迷っていた。 つい先日、十七歳の誕生日を迎えたばかりのエマは、化粧室の鏡の前で立ち尽くしていた。小袋から取り出した櫛で、肩まで届く淡い金茶色の髪を丁寧にとかしながら、ふと眉を寄せて小首を傾げる。彼女の顔は世間一般で言う“美人”とい... 2024.04.14 第一部I-02 混沌の幕開け編
第一部 【I-002】運命の子 森の中にひっそりと建てられた小さな家。それは「小屋」という言葉がふさわしいほど質素なものだった。 それまでイザベルが住んでいた城と比べれば、比較にならないほど狭い。下僕扱いされていたとはいえ、かつては絹のドレスを身に纏い、静かな室内で豊か... 2024.04.12 第一部I-01 プロローグ
第一部 【I-001】悲運の女帝 グランフェルテ帝国は、特殊な国家であった。帝国と名付けられてはいるものの、皇帝に権力は無いに等しかった。代わって実権を掌握していたのは、今や世界を支配するほどの勢力となった、エクラヴワ大王国である。 とはいえ、『帝国』とは初めから単に名ば... 2024.04.07 第一部I-01 プロローグ