第一部 【I-022】北から砂漠へ イメルダの乗ってきたという船を見て、一同は息を呑んだ。……南の大陸からの長旅に耐えうる堅牢な船を想像していたものの、目の前に現れたのは一般的な豪華客船を凌駕する、まさに海上の宮殿と呼ぶにふさわしい存在だった。 「え、イメルダおめえ……何者... 2024.07.24 第一部I-05 富饒な砂漠国編
第一部 【I-021】黒薔薇の誘惑 ひとり書斎に戻り、机上に積み上げた書類に手を伸ばしたものの、内容が頭に入ってこず、ヴィクトールはそれを再び卓上に投げ出した。 戦の準備以外にも、山積する業務がある。国内議会の承諾書を精査し見解を示したり、貴族の嘆願書に裁可を下したり、城下... 2024.07.23 第一部I-04 安息と策謀編
第一部 【I-020】三大兵団 会議とはいっても、集まるのは自分と二人の配下だけだ。時間より少し早いが、ヴィクトールが約束の場所である自分の執務室に入ると、既にアルベールが応接机に座って書類に目を通していた。 「何だ、遅刻してくると思っていた。珍しく早いな」 そう言わ... 2024.07.12 第一部I-04 安息と策謀編
第一部 【I-019】姉と弟 グランフェルテに伝わる伝統舞踊は、鑑賞する者の心を洗うかのような優美な舞である。純白の柔らかな衣装を、そよ風に舞い散る花弁のごとく大きく広げ、上下に優雅に波打たせる。その簡素さゆえに、踊り手自身の魅力が存分に発揮され、見る者を深く魅了するの... 2024.07.03 第一部I-04 安息と策謀編