2024-05

第一部

【I-010】不穏な海の街

翌日の朝早く、白亜の船体を持つ飛翔船は、再び内海を越えるべく西の空へと舞い上がっていた。国でゆっくりと時を過ごしていては、期日に間に合わなくなってしまう。自らが定めた計画とはいえ、あまりにも余裕のない計画だと、ヴィクトールは溜め息をこぼした...
第一部

【I-009】帰還

今が真夏である事を感じさせないほど心地良い風が、城の中にまで吹き込んでいる。ここに暮らす華やかな人々の心にも、ひとときの安らぎをもたらしていた。  一年を通して穏やかな気候に恵まれたこの美しい草原に城を建てたのは、今から三百年前に世界にその...
第一部

【I-008】嵐の後

炎の嵐が去った城内は、かつての優雅な飾り付けの面影もない様相ではあったが、あの阿鼻叫喚の状況から一転して、驚くほど静かになっていた。  後を任された新首長ラミーは、彼と共にこの地に留まるよう命じられた一部の配下たちに何やら指示を出すと、城の...