第一部 【I-031】実力の差 こちらが来訪を告げる一発の空砲を放っただけだというのに、地上からは無数の砲撃が返ってきた。最初から容赦なく撃ち落とそうとする敵の意思は明白だ。 「おお、噂通りだな。随分と威勢がいいぞ」 ヴィクトールは船窓からその様子を確認し、まるで珍しい生... 2024.12.05 第一部I-06 凍てつく大地編
第一部 【I-030】人質交渉 翌朝、レオナールはふたりを伴って王城へと向かった。簡素な獅子の石像が規則正しく並ぶ城門への街道には、民民の暴動を警戒するかのように多くの兵士が巡回し、彼らを獲物を狙う猟師のような鋭い眼差しで見つめていた。 やがて、吹雪く城門に辿り着く。温も... 2024.11.20 第一部I-06 凍てつく大地編
第一部 【I-029】一足先に 緑色の船体は、ようやく海を渡り、ポーレジオン付近に差し掛かっていた。……帝国領となって三月ほど経った今、かつて拷問王が統治していた海沿いの街がどう変わったのか、エマは気になっていた。しかし、船は目立たないよう高度を上げて飛行しているため、地... 2024.11.20 第一部I-06 凍てつく大地編
第一部 【I-028】白き花の影 小さな会議室の円卓上で、魔術将軍の細い指が示したのは……アロナーダとは対照的に、グランフェルテから遥か北方に位置する地域だった。世界を見下ろす『誇りある不死鳥』の首の部分に当たる場所には、フィジテールという国名が記されている。 「ここは古く... 2024.11.03 第一部I-06 凍てつく大地編
第一部 【I-027】護衛の騎士 あの衝撃の宣戦布告から、およそ三カ月……かつての大王国領マリプレーシュとポーレジオン王国が次々と瞬く間に制圧される様を目の当たりにし、世界は深い恐怖に震えていた。……しかし、その後しばしグランフェルテ帝国の動きがはたと停止したように見えたた... 2024.10.27 第一部I-06 凍てつく大地編